今回お話をお聴きしたのは、あみけるひろば横浜 代表 杉本智穂さん。認知症支援カフェの活動を始められたのは、ご自身の「当事者」としての想いからでした。
Age100.ing People file No.5
認知症支援カフェあみけるひろば横浜 代表 杉本智穂
「ハートが開かれた!」
杉本さんの“扱われているテーマ”は「若年性認知症」に向き合う本人と家族。とても重たい問題だと思うが、いつお会いしても杉本さんの表情は明るく見える。
「きんちゃん(主人)が若年性認知症と診断を受けてから、自分も本当に悩んだし落ち込んでいました。別の辛い出来事も重なって、自分も病気になってしまった時期もあり、鬱の状態でした。」
そんな杉本さんの生活を変える出会いが訪れる。
「落ち込んでばかりもいられない。でもどうすればいいのかなと思って色々なところに顔を出していた時、ケアフェスでアーツアライブの取り組みを知りました。」
「これは良いかもしれないと思い、鑑賞プログラムに、きんちゃんと一緒に出掛けたんです。」
「西洋のお城の絵を見ていたら、昔、縁のあった松本城のことを、きんちゃんが嬉しそうに話しだしたんですよね。ハートが開かれた瞬間でした。」
「できなくなっていることを物陰に隠れて観察しているような、自分のきんちゃんに対するそれまでの冷たい感覚から、自由になった気がしました。」
「人生に無駄なことなんてない」
杉本さんは、この出会いをきっかけに、養成講座に通うようになり、今ではエデュケーター(コンダクター)として、自らもプログラム(アートリップ)を実施されている。
「きんちゃんのことを改めて惚れ直したというか、本当に今も、一杯色々なことを考えているんだなぁ、会話していて楽しいなぁって。生活に潤いが戻ってきましたね。」
「息子や義理のお母さんとの関係も、変わってきました。この前は、“優しくなってきたね”と、息子に言われたんですよ。」
「きんちゃんが若年性認知症になったのも、これっていいことかも? と思えるようになってきています。私に与えられた機会なのかもしれません。」
「父はアート雑誌を購読するような人でしたし、高校時代にはたまたまですけど自分も美術をやっていたんです。最初に働いていた時に企画の仕事やっていたり。あみけるひろばをやるようになって、こうしたことが凄く役に立っています。人生に無駄なことなんでないんですよね。」
「当たり前の生活を地域でできるように」
「そもそも、あみけるひろばを始めた理由は、若年性認知症を扱う施設が近くになかったからなんです。でも調べてみると、地域の中にも若年性認知症の方が住まわれていることが分かりました。」
「自分たちは、たまたまいい出会いがあったので乗り越えることができましたけど、ご本人やご家族の方で、以前の自分たちのように大変な方もいるだろうなと思って。」
「地域の中で、仲間やお友達を作ることが、とても大切だと思います。私が今、あみけるひろばの活動をつづけられるのも、以前からの知り合いの方や、新しく手伝ってくれる仲間が近くにいてくれるからです。」
「当たり前の生活を地域でできるようにすること。あみけるひろばがそこに少しでも役立つように、これからも活動を続けていきます。」
<お話をお聴きして>
杉本さんとは、アーツアライブのエデュケーター(コンダクター)仲間です。笑顔一杯の杉本さんのプログラム実施の回は、いつも暖かい雰囲気に包まれます。
実は息子さんとも顔見知りなのですが、それぞれ別の機会で知り合ったので、最初お互いが親子だとは知らず「凄い方が居てね…」「あ。それうちの母のことですよ!」といったトンチンカンなやり取りが(^^;
じっくりお話をお聴きするのは今回が初めてでしたが、予定いただいた時間も越えて、きんちゃんと一緒に熱心にお話してくださり、改めてその想いを強く感じる機会になりました。
最後に、”一歩踏み出せないで悩んでいるような大人たちへ、何かアドバイスはありますか?” とお聴きしたところ、こんなことをおっしゃってくださいました。
「想いは伝えることでつながっていくもの。今は無理だなって思う事もいつか叶う。だから伝えるのは、今でしょうって(笑)。
RUN伴プロモーション映像の中で、きんちゃんも、“やっていきたいというかやりたいとかそういう気持ちは持っていなくちゃいけない”と話してくれてるのに気づいて、夫婦で同じこと言っているよなぁって。」
杉本さん、きんちゃん、またアートリップでご一緒しましょうね♪