人生100歳時代に、道の途中で新しいチャレンジをされて、人生を豊かに過ごされている先人(達人)の皆様を突撃訪問! その真髄やいかに?
今回お話をお聴きしたのは、
株式会社日立製作所 CSR・環境戦略本部 企画部 担当部長 増田 典生さん。
仕事に取り組む増田さんの姿は、企業人としての『Age100.ingな人』そのもの。格好いい“リーマン”のご様子をぜひ!
Age100.ing People file No.7
日立製作所 CSR・環境戦略本部 企画部 担当部長 増田 典生
「仕事は楽しむために」
日立製作所。今更説明するまでもない、伝統ある日本の大企業だ。増田典生さんは、ここでCSR・環境戦略本部の企画部部長として指揮をとっている。
「元々文系だったし、“コンピューターの会社”には全く関心はなかったんですよね」
増田さんの社会人のスタートは、日立系のソフトウエア開発会社から始まった。当時、まだ3期目の若い会社で、人数も“日立”の名前を冠しているが、200人足らず。新入社員の採用試験も、筆記試験と社長面接を同日に行うような規模だったという。
「実は第一志望は、業界の全く異なる情報サービス会社。これからは情報がお金になる時代だなぁと思って。ところが学生時代の大好きな先輩から“俺のところも受けてみてくれよ”と話があり、断れなくなっちゃって…」
顔を立てるつもりで受けたところ、筆記試験の問題がさっぱり解けず。その後の面接で社長に逆に質問してしまった。
「“あの問題が解けないと入社は無理ですよね?”と聞いたんです。そうしたら“そんなことはないよ”との返答で、“じゃあなんで採用に関係ないような問題を出すんですか?“って。相当生意気な質問だったと思うのですが、そこが印象に残っちゃったみたいで」
内定が出た後も悩みはあったそうだが、先輩の言葉が決め手になった。
「“仕事は楽しむためにあるんだよ”って、その先輩が本当に楽しそうに話してくれたんです。あぁ、この会社でやってみたいなぁと。」
「飽きました、私!」
若い会社でバリバリ楽しく仕事をするぞと意気込んで入社したものの、社会人生活、それほど甘くはなかった。
「技術系の話に全くついていけなかたんですよね。だから教育センターという本流ではないところに配属されたのかなぁと。でも必死になってやっているうちに、仕事がどんどん面白くなってきました。」
そこから、人事、教育系でのキャリアを積んでいくことに。
「自分のやりたいこと、できること、求められることが一致した時期が長く続いていました。それこそ順調に昇進もしていたし(笑)。でもなんかこのままでいいのかなぁって。自分がチャレンジしている部分がなくなってきている気がしました。で、また当時の上司に生意気なこと言っちゃたんです。“飽きました、私!”って」
こうして、活躍のステージを社内で自ら広げてきた増田さんだが、勿論、常にチャレンジが成功したわけではない。
「“はぐれ”、“やさぐれ”が大切」
「畑違いのところに手を挙げて入っていくというのが、自分のチャレンジのスタイルですね。でも、最初に経営企画部を拝命した時は、本当にうまくいかなかった。自分がこれほどできないのかと情けなくなりました。」
入社当時から築き上げてきた、楽しさに裏打ちされたはずの自信が消し飛んだ。そして降格。
「会社にいてもそれほどやることがないわけで、時間がね、正直沢山できたんです。だから、あちらこちらの社外の集まりに顔を出すようになりました。“はぐれ”たり、“やさぐれ”たりしてたわけです(笑)。でも、実はこれがとても良かった。」
これまでとは違った“外”との交流から、仕事として面白いテーマ、チャレンジしたいことが色々と具体的に見えてきた。社内SNSもその一つ。傍系プロジェクトではあったが、外での知見を入れ込みながら立ち上げていくと、やがて社内で評判になり、製品としても販売されることに。
「この時の経験は、社会イシューを起点にビジネスを考えるという、今の仕事、視点に間違いなく役立っていますね。」
降格から数年して、増田さんはブランド戦略・CSR部門長になる。
「“あ、それそれ♪”って言われるために」
日立製作所のCSRに関わる取組みは、日本企業の中ではかなり先駆的に見えるが、増田さんのチャレンジはまだまだこれからのようだ。
「GEやシーメンスといった企業は、自社のサステナビリティ戦略を明確に、分かりやすく打ち出して、事業創造とも結びつけています。日本の企業も、個々の部分では負けず劣らずの実践や実績はあるのに、それがグローバルに打ち出せていません。ここ数年で、そこを変えたいと思っています。」
大企業の部門長としての「顔」で、きっぱりと明言された。そして続けた言葉は・・・
「サステナブルとかCSRとか、横文字を使うとわかりにくいですよね。結局は共感し合えるようにどんなことをするのかということ。“あ、それそれ♪”って多くの方に言ってもらえることが、企業も個人も嬉しいはずですから。 “楽しい”って自分が“楽(らく)する”ことじゃなくて、相手と一緒に喜ぶことですもんね。」
そう、楽しそうにお話ししてくれたのが印象的だった。
<お話をお聴きして>
増田さんとのお付き合いは、かれこれ、10年近くになります。最初にお会いしたのは、ひょっとすると、お互いが、「はぐれ」「やさぐれ」の頃だったかも(笑)
いつも温厚な語り口で、笑顔を絶やさない増田さんに、今回のインタビューをお願いすると、「私で良いんですか?」と何度も確認されていました。
「企業人がチャレンジしていないとか、心豊かに人生を楽しんでいないなんて大間違い! 世間の使えないオヤジ論を打破して、“青黒”の真髄を見せるためにも、Age100.ingな人たちの代表として、ぜひご登場願いたい!」
と、こちらからの大袈裟かつ強引なお願いで了承いただいたという次第です。ちなみに、“青黒”とは、青い志(パッション)と黒い作法(ロジック)を兼ねそろえた人のことを指します。
増田さんの会社での取り組みは、まさに「志事(しごと)」になっていて、いつもご活躍を拝見するたびに、誰かに伝えたくなります。今回はその機会をいただけて本当に良かったです。(伝えきれていない部分が多かったと思いますが…)
インタビューの最後に、こんな質問もしてみました。
“企業人には定年がありますが、増田さんはその後のプランはどうされますか?”
「嫁さんと一緒の時間を大事にしたいですね。“あなたの好きなことをしなさいよ”ってずっと言ってくれて支えてくれてる伴侶だから。あ、勿論、マルル(注:愛犬の名前)も」
いやいや、世間はそう簡単に増田さんを「隠居」させてくれませんよw だいたい、今でも十分に愛妻家で愛マルル家じゃないですか。元祖社内失業家の私が言うのだから、間違いないです(爆)
これからも、お付き合いのほど、どうぞよろしくお願いします。