【Pepole】Age100.ingな人たち File6 「葡萄の木が可愛そう」

人生100歳時代に、道の途中で新しいチャレンジをされて、人生を豊かに過ごされている先人(達人)の皆様を突撃訪問! その真髄やいかに?

 

今回お話をお聴きしたのは、前田龍殊園(まえだりゅうしゅえん) 代表 原田旬さん / 農園主 原田文さん ご夫妻です。自家栽培の葡萄でワインを作り始めた理由とは…?

 

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Age100.ing Peiple file No.6

前田龍殊園 代表 原田旬 / 農園主 原田文

「葡萄の木が可愛そう」

前田龍殊園。原田さんご夫妻の営んでいる自家栽培葡萄を使ったワインのお店の屋号は、奥様の文(あや)さんの旧姓を引き継いだもの。山梨で葡萄作りを家業としていたご両親が、高齢と病気のために畑を続けることができなくなった時、文さんは大事な決断をしなければならなくなった。

 

「それまでも手伝いということでは関わってきたんですけれど、“本業”として葡萄づくりをやるとなると、覚悟が必要でした。大好きな畑を残したいという気持ちと、自分にできるだろうかと、散々に迷いました。」 旦那さんの旬(ひとし)さんは、当時、単身で海外赴任中。じっくりと相談もできない中、文さんが決断をしかねていた時、大学生だった次男からの一言が、大きなきっかけになった。

 

「長く生きてきた葡萄の木が可愛そう。僕に畑をやらせて!」

 

「自分がそうであるように、息子にとっても、おじいちゃんやおばあちゃんとの思い出の多い、愛着の深い葡萄畑だったんですよね。」

文さんは、畑を息子に委ねてみようと心から思ったそうだ。

息子さんは、期待にたがわず、いやそれ以上にしっかりと葡萄畑と向き合った。数人の友達を巻き込んで始めた葡萄作りの輪が、しだいに大きくなり、周りの農家からも認められるようにもなった。

 

「そろそろ卒業に向けて勉強に専念しないと。お母さん、葡萄畑、どうする?」

二年がたち、そう切り出された時、今度は悩みは一切なかった。

「息子が本当にここまでやってくれたんだから、次は私の番だよねって」

 

こうして、いよいよ文さんが“本業”として農園主になることに。

「この葡萄で、ワインを作ろう!」

旦那さんの旬さんも、その頃、転機を迎えていた。海外赴任から戻ってきた後、自身のキャリアを考え、長く勤めていた会社を辞め、新興の海外企業に転出したところだった。

 

「ワイン作りは、その時点で自分の選択肢にはなかったんだよね」

 

ところが、文さんと畑に足を運ぶ機会が増えてきた中、土作りから代々こだわっている葡萄なら、絶対美味しいワインが出来るという思いが、ふつふつと湧いてきた。

 

「元々、お酒が好きだったし、家族が大好きな畑で採れるこの葡萄で、ワインを作ろうって。まぁ、商売を考えたというより、自分で飲みたかったという感じかなぁ」

 

文さんも、家族の想いが沢山詰まった葡萄で自分たちがワインを作ってみるというプランに、強く魅力を覚えた。こうして、二人で、ワイン作りを進めることになった。

「大事な時、嬉しい時に」

その後様々な出会いなども経て、2015年3月に、前田龍殊園をオープン。単一の畑から採る自家栽培の葡萄だけで作るワインの良さが、口コミで広がり、少しずつファンも増えてきているところ。

 

「先日、フレンチの名店が料理に合うからと店に置いてくれたんだよね。プロに認められるということは本当にありがたい。でも一番嬉しいのは、大事な時、嬉しい時に、前田龍殊園のワインを使ってもらう事。卒業時にお世話になった先生に贈りたいとか、ご主人の誕生日にとか、わざわざ買いにきてくださるお客様を見ると、ワインを作り始めて本当に良かったなぁって」

 

すっかり「店主」の顔の旬さんに、文さんが続ける。

 

「二人でね、絶えず話し合っています。梱包作業どうするのかといった細かい話から、今後の事業全体の話とか。色々な方々に支えられて、大好きな葡萄畑をやらせてもらっています。だから、“何か美味しいものでお祝いしたい時には、前田龍殊園だよね”って、沢山のお客様に思っていただけるように、努力しなければいけないなぁって」

 

ところで、息子さんは今はどうされているのだろう?

 

「畑をやるって言ってくれた次男は、今、ニュージランドで獣医の勉強中。長男は会社勤めの合間に、お店や畑を時々手伝ってくれてます。あ、説明を忘れていました。こちらのラベル、イラストは長男が描いてくれて、文字は次男が書いてくれたんですよ。ラベル貼ったのは私と旦那。まさに、家族経営ですよね」

 

文さんの笑顔がまた一段と輝いた瞬間だった。

<お話をお聴きして>

原田さんご夫妻とは、かれこれ30年近いお付き合いです。旬さんとは以前の会社で同僚だった間柄。お互い、今の様子は、30年前どころか、数年前でも想像すらできませんでした。

 

昔の会社仲間で旬さんに会うたびに、ワインについて嬉しそうに語るので、今回お話をじっくり聴くまで、文さんと息子さんが「主役」だとは知りませんでした。事実が分って良かった(笑)

 

会社時代と今の一番の違いを、旬さんに尋ねたところ、

「自分自身が面白いと思う事を、自分の責任でやることかなぁ。一方で、自然が相手なんで自分でコントロールできない部分もあるんだけど、それもしょうがないことと思えるようになったかなぁ」

確かに、会社時代はかなりピリピリしてましたもんね。仕事の納期守らない輩とかに(笑)

 

まだまだ商売ベースでは苦労が絶えないと、話をされていましたが、お二人の様子を見ていると、本当に羨ましいなぁ~と。世代を越えて、家族が仕事を通じてつながっているという“素敵”。

 

完全に酔っ払う前に、今回はこの辺で。また、飲みに来ますね♪