アートは、これまでビジネスパーソンが真剣に「学ぶ・学びたい」対象にはなっていませんでしたが、この数年で様子が大きく変化してきているようです。
AI(人工知能)時代の「教育」はSTEM(S=Science科学,T=Technology技術,E=Engineering工学,M=Mathmateics数学)に加え、A=Art(美術)を含めたSTEAMが重要という議論が出てきたり、ユニコーン(巨大ベンチャー)企業の代表であるAirbnbの創業チームのアーティスト出身者が話題になったり、アートがビジネスパーソンの気になるトピックスになってきました。
ビジネス街の大型書店では、目立つところにアートに関わる書籍が並ぶようになりました。ざっと見渡しただけでも…
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 』山口周 著
『西洋美術史 世界のビジネスエリートが身につける教養』木村泰司 著
『世界のビジネスリーダーがいまアートから学んでいること』ニール・ヒンディ著
『ビジネスの限界はアートで超えろ!』植村岳史 著
『なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?』岡崎大輔 著
「ビジネス・エリートを目指すなら、アートは学んでよね!」と言わんがばかりです。ちなみに、ビジネス・エリートってどんな人なのか、個人的にとても関心があるのですか、それはさておき、アートは今やビジネス本の中でも「(そこそこ)売れる」と出版社が思うテーマになっていることは間違いないようです。
私は、ここで挙げた著作に全て目を通しました。…と、プチ自慢をしたいわけでも、ダイジェストしたいわけでもありませんので、ご安心?ください。
元々アート好きな私としては、とても楽しく読ませていただいたのですが、もし、これまでアートに興味や関心のなかった方が、こうした本に影響を受けて、「ビジネスに役立てたい」の一心からアートを学ぼうとすると、相当に窮屈な想い(≒退屈、苦痛)になるのではないかと思い始めたしだいです。
実は、私もアートはビジネスに役立つ! と本気で思っているのですが、「じゃあどう役立つの?」と質問されて説明を重ねるほど、自分が感じている「お役立ち感」から遠のく気がするのです。
「それはあなたの説明力の足りなさでしょう」…というご指摘には100%以上同意なのですが、それでも、定量的には勿論、定性的であれ文章等で伝えることは難しい。アートの魅力や可能性は、各人が体感するしかないのかなと。他人様からの説明を頭で「理解」するだけではく、色々な機会や場で五感で感じながら、何かの拍子に「ああ、そういうことか」と自分なりにアートの「お役立ち感」がわいてくる。教えてもらう学びではなくて、自らが気づき身に着けていくような学びとでも言えばよいでしょうか…うーん、やっぱりうまく言葉にできてないですね。ごめんなさい。
だからこそ、混んだ美術館で有名作品をチラ見するとか、美術史を必死に覚えるとかだけではなく、アートと自分がこってりと「触れ合う」ことが、とても大切です。いわゆる心の琴線に触れるような経験を(ネガティブに反応しちゃうような経験も含めて)重ねることこそ、アートの「学び」スタイルだと強く思います。