【ブログ】ビジネスに効く?アートな話② 「印象派に見るイノベーションの極意Ⅱ」

絵画の世界で有名なイノベーションの一つと言えば「印象派」。一部の天才たちにより引き起こされたようにも思えますが、印象派の背景をもう少し見ていくと違った様子も見えてきます。
(ここまでの内容は ビジネスに効く?アートな話①をご覧ください)

まず主題。印象派の出現まで、日常の光景を描いた画家たちが西洋にいなかったのかと言えば、そんなことはありません。第1回印象派展(1874年)のおよそ25年前に、ミレーという画家は農民の生活シーンを描いていましたし、クールベという画家も、1855年には自身をレアリスト(写実主義者)として名乗り、田舎町で市井の人の葬式を描いたりしています。印象派は主題の選び方で、決して先駆者であったわけではありません。

 

印象派の筆触分割という描き方も、確かに斬新なものでしたが、いくつかの要素が誕生していたからこそ実現できたと見ることもできます。1839年の写真の発明。これにより、本物そっくりという絵画の価値は下がっていくことになり、画家は、光や色といった新しい価値を見いだし、表現する必要がでてきました。1841年に発明されたチューブ入り絵の具によって、画家はそれまでの室内のアトリエではなく、戸外で絵画を完成させることができるようになり、明るい日の光を表現できるようになったのです。1843年にパリと郊外のルーアンが汽車で結ばれたことも、画家たちのフィールドを広げ、新しい画法を試す機会を与えたと言えるでしょう。

 

何より、印象派の誕生に一番大きかったのは、絵画を鑑賞する層が、これまでの王侯貴族から、新興ブルジュワジーや一般市民に広がってきたことです。絵画美術が大衆化し、これまでとは違うタイプの絵画が求められる土壌ができてきたという状況がなければ、印象派の画家たちが、短期間にこれほどの人気を博すことはなかったでしょう。

 

このような話を聴くと、マーケティングに見識のある方は、「PEST分析」を思い出すかもしれませんね。PEST分析とは、マーケティングの大家、フィリップコトラー氏が提唱した、「自社を取り巻くマクロ環境を以下の4つの視点から、現在及び将来にわたりどのような影響を与えるかを分析する手法」のことです。

この4つの視点の中で、何かが大きく欠けていたり、著しく未成熟だったりすると、どんなに良いアイデアであっても、実現して世間に受け入れられることは難しいということになります。天才がどんなに出現したところで、機が熟していなければ、イノベーションは起こらないという風に考えることもできます。確かに、印象派の画家たちは、時計の針を早めに進めたかもしれませんが、彼ら彼女らだけが、絵画の革新を推し進めたわけでないことだけは確かなのです。

印象派に学ぶべきイノベーションの本当のポイントは?

しかしながら、時計の針を早く進める方法こそ、ビジネスパーソンが実は最も知りたいことであり、学びたいことかもしれません。印象派の様子をさらに眺めていくと、これは参考になるかもと思う点がありました。新しい「PEST」です。

続きは「ビジネスに効く?アートな話③」をどうぞ