台湾のアートシーンをちょこっと味わってきました③

台北の街中を歩いていると、色々な「アート作品」に出会えるのは、東京と同じって感じです。“いかにもの風情”だったり、逆に、「ほ~っ、そう来るの…」と驚くものと出会ったり。なかなか一筋縄ではいかない面白さがいいですね。

上の写真は駅のコンコースで見つけたもの。
『The Moment We Meet』というタイトルで、少年が歳を重ねて大人、老人にになっていく様子が、パラパラ漫画のような形で表示されていきます。これは、何気に目を引きますよね。

こちらは、“風情ある”方の作品。南国のイメージ漂う路地の塀に、タイル画が何枚も埋め込まれていて、そぞろ歩きしながら観ているだけで楽しめます。

台北は古い建物をリノベーションするのも「得意」なようで、特に日本の統治時代の建物を取り壊さずうまく再活用しているように思えます。
今や一大観光スポットとなっている、《華山1914文創園区》,《松山文創園区》,《四四南村》 などなど。懐かしいレトロな雰囲気が、忙しい都会の時間、空間の中で、丁度よい「間」というか「ピリオド」になっている気がします。

華山1914文創園区 にて

早速に、旅の小休止は、レトロな雰囲気なのに今風(死語?)なティーポットでのウーロン茶を(^^)

ということで、台湾で出会った「アートシーン」をちょこっとご紹介いたしました。また行きたいなぁ…(^^)
台湾のアートシーンをちょこっと味わってきました① 
台湾のアートシーンをちょこっと味わってきました②

台湾のアートシーンをちょこっと味わってきました②

アジアでのアートフェアで有名なのはアートバーゼル香港ということらしいですが、こちらTAIPEI DANGDAIも最近は知名度が上がってきて、世界的な有名ギャラリーも出展するようになってきたそうです。
こちら、行ってきました。

ちなみにアートフェスとアートフェアは(業界?では)しっかり使い分けられている言葉だそうで、フェスのほうは「基本的に売買はなく、どちらかというと地域イベント的に開催」,フェアのほうは「売買が目的で、見込み客の集まりやすい都会で開催」だそうです。TAIPEI DANGDAIはフェアですので、「売るため/買うため」のイベントということですね。 

会場の雰囲気はこんな感じです。凄くラグジュアリー感があるということではなく、気軽に作品(≒商品)をみて回れる感じ。勿論、「ビハインドザカーテン」ということで、ブースの中にはお得意様専用のおもてなしスペースをしっかり確保しているところも見受けられました。(中には残念ながら潜入できずw)

色々とブースに立ち寄ると、声をかけられる人とそうでない人がいることに気がつきます。見込み客かそうでないかを見極める目が大切なのでしょう。カメラを引っ提げてベンチコート風トップにリュックといういでたちの私に、意外にも声がかかります。「フォトグラファーの方ですか?」 そうか、そういうことか。「宣伝」につながる可能性も探っているんだなと。

出展されている作品は、各ギャラリーがお勧めの作家さん達のものなので、既に有名どころの方や、認められつつある方ばかり。庶民(つまり私)に手が届くような代物ではありません。 小品で気にいったものがあったので参考までにお値段きくと「700万円(日本円換算)」とのお答え…あらら。それでも安い”価格帯”の部類なのかも。
 台湾での開催なので台湾の作家さんが多く扱われているということもなく、やはり世界の富裕層を意識してのイベントなんだと改めて認識。 まぁおかげさまで、コンテンポラリーアートの「売れる作品」のトップクラスを直に鑑賞できる貴重な体験になりました。

日本でこのクラスのフェアが開催されないのは、やはりマーケットが小さすぎるのでしょうね。(日本人で対象となる購買層は海外のこうしたフェアに行けば良いのでしょうが…)  アートフェアからも日本の元気のなさを感じてしまい、羨ましく思いつつ、会場を後にしました。

台湾のアートシーンをちょこっと味わってきました①
台湾のアートシーンをちょこっと味わってきました③

台湾のアートシーンをちょこっと味わってきました①

文字が書かれる様子がまるで舞いのように

2020年の始まりに台湾に行ってきました。
台湾は随分昔になりますが5年間ほど住んでいたことがあり、勝手に第二の故郷と呼んでいるほど大好きな土地です。

ここでのアートシーンと言えば、まずは台北故宮博物館。あまりに定番過ぎて、何を今さらという感じをお持ちの方もいるかもしれませんが、訪問のたびに新しい発見があります。

今回は、「魅せる」展示に感心至極。

「白菜」《翠玉白菜》や「お肉」《肉形石》ですと、まずは観ておこうかとなりますが(ちなみに今回は故宮南院に”出張中”で不在でした)、焼き物や書画とかになると、よほど好きな方でないと、ついついパスしてしまいそうな感じかなと。ところが、「なるほどこれは面白い」となる工夫が!

例えば書画の映像。一つ一つの文字が画面いっぱいに筆で書かれていく様子を美しくビジュアルで見せてくれたり、水墨画の中を自分が自在に飛びまわっているような俯瞰で見れるようにしたりと、それぞれの作品の魅力がまさに体感できるような仕掛けが随所にありました。一度「へ~ぇ♪」となれば、後は通常の展示も楽しく想像が膨らむというものです。

良い作品があるので、後はどうぞご覧ください…という姿勢ではなく、色々な魅せ方にトライしているのが、凄く良いなぁと思いました。

水墨画の中を「鳥」になって飛んでみる…

歴史ある文化、文物を次代につないでいくのは今を生きる我々の務めかなぁと思いますが、その時代に適した伝え方があるものなのだと納得。鑑賞者と作品における、コンテンポラリーな(≒現代としての)やり取りがデザインされているなぁと。素敵♪

台湾のアートシーンをちょこっと味わってきました②
台湾のアートシーンをちょこっと味わってきました③

【お知らせ】アートフルライフデ・ザインコースの様子が掲載されました♪

今年も楽しく”修了”した、丸の内プラチナ大学の「アートフルライフ・デザインコース」。三菱一号館美術館で実施したフィールドワークの様子を、エコッツエリア協会のHPに掲載いただきました♪

 “アーティスト”になって見つける、新しいアートとの付き合い方

当日の様子は、レポートをご覧いただくとして、サイドストーリーをこちらで少々。

 今回の「アーティスト役」は、事前に手を挙げてくださった3名の方。アーティストになり切るには事前調査(予習)が必要ということで、別の日に観覧の時間をしっかりとってくださいました。(残念ながらお一人の方はご都合で事前観覧はかないませんでしたが) 
 美術ファンの方でも、同じ展覧会に数回通う事はまれだと思いますが、即興に見えた「役作り」に、実は、たっぷりと時間をかけていたのです。だからこその「どこまでが本当の話…?!」と、聴いている方が戸惑うような”迫真”の台詞に。

美術知識が無くても作品は楽しめますが、知識があれば楽しみがさらに深まるのも確か。一方で、 知識だけで作品を眺めるようになると、「理解」「解釈」だけの窮屈な鑑賞に終始してしまうことも。 この辺り、バランスは様々で微妙ではありますが、感覚と知識の往来が、作品鑑賞をより楽しませてくれることは間違いないなぁと、改めて感じたフィールドワークの時間でした。

今年のアート鑑賞、アカデミー賞的振り返り

本日よりいよいよ師走。少し気の早い気もしますが、今年のアート作品を振り返り、アカデミー賞(主要五部門)になぞらえて勝手に「賞」を出しておこうかと。対象は勿論自分自身が直接堪能したものに限定。ギャラリー含めて60以上の「展覧会」に顔出してみましたが、勿論見逃したものの方が沢山。「あれが無いだろう!」もあると思いますが、見ていないのでごめんなさいということで。何より、美術ファンの目線というよりは、ビジネスパーソン視点で、これは“学び”があったなぁというものを好んで選んでいますので、念のため。

★主演女優賞★ 
今年一番印象に残った女性作家は…塩田千春 
森美術館で開催の『魂がふるえる』展は、歴代2位の66万6271人(美術手帳Webより)の入場者を記録! インスタ映えする展示に、思わず「わぁ綺麗」と言ってしまった自分が、足を進めるほどにドロドロ感と向き合う羽目に。インパクトがともかく凄かったです。女性が足を運ぶ企画が大事と改めて認識。
*次点…やなぎみわ 

★主演男優賞★
今年一番印象に残った男性作家は…クリムト
東京都美術館と国立新美術館で、コラボ企画かと思うような“共演”の機会が。こういうプロモーションの仕方、ありですよね。あの作風にして、おじさん然とした風貌、それでいてやはりモテる。男性作家にはやはりミューズが必要なのかと、一人合点してしまいました。
*次点…ボルンタンスキー

★監督賞★
うまく作品を演出してくれたなぁと感じた展覧会… サントリー美術館「information or inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」  by nendo(佐藤オオキ)
キャプションを読む派、読まない派に美術ファンで分かれるケースが多いのですが、これを徹底したよなぁと、めちゃめちゃ感心。傘をさしてそぞろ歩きするようなコーナーも秀悦。“古美術”がてんで新しく感じられました。
*次点…ポーラ美術館 「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」

★脚本賞★
展示そのものに物語のような魅力を感じた展覧会…国立新美術館「カルティエ、時の結晶」展 by 新素材研究所 / 杉本博司+榊田倫之
ジュエリーデザインには、ぶっちゃけ、縁遠かったのですが、これはもう惹きつけられました。展示空間が半端なかったです。まさに「素材」に手を加えてどう見せる(魅せる)のかという、宝飾の基本を表現したのではないかなぁと。展示ディスプレイにお金かかってるのがありありで、ラグジュアリーな世界に妥協は無いのだと、庶民として理解できる貴重な機会でした。
*次点…山梨県立美術館 「デザインあ展」, 三菱一号館美術館 「マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展」



じゃじゃーん、そして今年の栄えある
★作品賞★
今年見た中では最高でしょうこれ! の展覧会…「瀬戸内国際芸術祭2019(秋会期)」
悩みました。だって、12島+高松,宇野という広域で開催。単独で素晴らしい常設の美術館だって混ざってますからね。これを一つとしてカウントして良いのかと、不公平?ではないかと…いや、やはり良いのです。〇〇トリエンナーレが話題となった今年。地域に根ざしたアートの力(時に強引過ぎたり、調子がずれていたりする面も含めて)をまざまざと感じさせてもらいました。粟島で見た瀬戸内少女歌劇団は一生忘れられない体験となりそうです。

さて、来年はどんな作品と出会えるかなぁ…。
日本も飛び出していきたいと思っています。

【レポート】ゲームで楽しみながらのワークショップ事例 ~丸の内プラチナ大学「アートフルライフデザインコース Day 5」

9月3日に実施した丸の内プラチナ大学「アートフルデザインコース」では、アートゲーム“モンダイアート”の考案者ヨシムラヒロムさんをお招きして、アートの「価値(価格)」にまつわる不思議と面白さを体感しました。

“モンダイアート”は、参加プレイヤーの一人一人が、画家/画商/コレクターと様々なアート市場での役回りをこなしながら、最終的に自分の資産価値(キャッシュ+所有作品の評価額)の大きさを競うという、ゲームです。
 「絵心なんて全くありません」という方の作品が高値で売れたり、欲しいと思った作品をオークションで競り落とせず悔しい思いをしたり、自分のコレクションを見ながら悦に入ったり…まさに現実の「アートマーケット」もかくやと思えるような経験ができます。

このゲームの“胆(きも)”の一つに、オークションに出されている作品全てのランク付け(評価)を行うという手順があります。良いと思う作品順にシンプルにランクすればよいのですが、自分の作品も含まれているし、ゲームに勝つことを目標に後の評価額を考えたりしだすと、なかなか素直にランク付けできなくなったりします。
 「価格決定のメカニズムが、あるようなないような…」
 「そもそもアートの価値って“お金”だけで換算していいの…」
なんてことも次第に気になるようになってきたりするのです。

一方で、作家として作品を作ることそれだけで楽しかったり、コレクターとして目利き力が問われることにドキドキしたり、何より気になる作品の魅力には容易にあらがえなかったりとか…、皆様、アートを通して笑顔になれる自分に気づく時間になるようです♪

終了後の皆さんからのアンケートには…
 単なるお金/絵ではなく組み合わせが面白い!
 描く側と売る側の両サイドを体験できたのは興味深かった。
 とても楽しく学びが多く、別の機会でもやりたいです。
 芸術に対する正当な評価を付けたい心と勝ちたい心の二つに揺らいだ
等々、刺激的で楽しい時間と感じていただけたコメントを多くいただきました。


「え~ なんか面白そうだからやってみたい!」という方は、いつでもご連絡ください。
*弊社への問い合わせはこちらから

【レポート】アートカードで作るワークショップ事例 ~丸の内プラチナ大学「アートフルライフデザインコース Day4」

アートシンキングという言葉がビジネスパーソンの間でも話題になるようになりましたが、「何となく頭では理解できるのだが、実際にはどうやって身につけたらよいのか?」とお悩みの方も多いのでは?

アートシンキングそのものも色々な定義付けがある中、これでOKというメソッドは無いとは思いますが、子どもから大人まで、どんな方でもその一旦が味わえるのではというツールがあります。それが「アートカード」です。

「アートカード」とは、アート作品(絵画、彫刻、時に建築なども含む)をポストカード程度のサイズに印刷したものです。(写真を参照) この「アートカード」を使って美術史的な知識を深めていくことも勿論できますし、色々なワークショップ(≒ゲーム)を通して、アートシンキングを体感していくこともできます。

今回丸の内プラチナ大学アートフルライフ・デザインコース」では、「アートカード」ゲームの一つの定番である「物語作り」をベースに、”コミュニケーション”を体感するワークショップをデザインしてみました。題して「私たちのアート物語」です。

まず初めに、参加者の皆さんに「アートカード」の中から、最も自分がアートらしく感じるカードと、アートから遠いと感じるカードを一枚ずつ選んでもらいます。「え~、だってこれアートカードなんだから全部アートなんでしょう?」というナイスな質問を早速いただきました。ここでのポイントは「自分が」というところ。まずは自分の中にあるアートのセンスを引き出してみようということです。

次に、なぜそのカードが自分にとって「アート」なのか/遠いのか、その理由を付箋紙に書き出し、選んだカードと合わせてホワイトボードに貼りだし、グループの皆さんと共有します。「アート」として感じる、感じないのポイントが同じでないこと、つまりはバラエティの多さ、「正解」のない楽しさを味わっていただけたようです。今回は、さらに一工夫して、自分の「アートセンス」に名前を付けてもらいました。選んだカードから感じる言葉を使って、「柔(やわ)派」とか「ザラ派」、「宇宙と交信派」などなどユニークなネーミングが続出!

ここまでが前段階です。ここからいよいよアート物語を作成します。各メンバーの出した「アートと一番思えるカード」を使って、物語の前半を作ります。「アートカード」を使った”紙芝居”を作る感じでしょうか。この際のポイントは「即興(Improvisation)」。 前の人が出したカードに、自分のカードを使って物語を続けていくというのがルールです。「これ、どうやって受けたらいいのぉ~」と、自分の番が回ってくるとドキドキですが、逆に予想もしない展開に、グループのみんなで大笑いといった感じになっていました。

後半は「アートから一番遠い」と思うカードを使って物語のエンディングまでを作ります。前半と大きく異なるのは、グループ全員で相談しながら、台本を組み立てていくことです。「計画(Plan)」あるいは「台本(Scenario)」作りをチームとして進める感じですね。前半は「偶然」、後半は「意図」を意識してもらうプロセスなのですが、面白いことに、前半の方がやりやすかったというグループと後半の方がスムーズだったというグループに感想が分かれたこと。この辺り、チームで何かをやる時の参考になる気づきもありそうですね。

斉藤まなみさんによる当日の「グラレポ」

「アートカード」を使ったワークショップの様子。少しはイメージいただけたでしょうか? 「アートカード」を使ったゲームやワークショップのやり方はそれこそ無限大。企画を立てること自体で色々と発想が広がるので、それだけでも十分に「アートシンキング」が鍛えられそうですね。 

ご質問、ご意見ありましたら、ぜひぜひお気軽にお知らせください!

参考)今回使用した「アートカード」はこちら 

【ブログ】ビジネスパーソンがアートを”気軽”に楽しむ方法 <漫画編>

アートを楽しむというと、流行りの展覧会に行くことぐらいしか思い浮かばない方に、誰でもお気軽にアートを楽しめる方法はないかと、私自身が実際に試してみて、これは♪と思った内容を、気ままにお伝えさせていただきます。 第一弾は<漫画編>です。 「美術漫画」(アート漫画)で検索すると、お薦め10選といったサイトをいくつか発見できます。こちらから、好みのものをいくつか読んでみるのから始めてみるというのはいかがでしょうか? 美術知識をしっかり得られるような作品や、業界の裏話に通じるような話し、美大生の青春を描いたものなどなど、多彩です。作家(マンガ家)のアートの料理の仕方で、自分にはなかった視点に驚いたり、「これわかるぅ~ぅ」といった親近感を感じたり、混んだ展覧会で疲れるより、はるかに感動があるかも。 実際に読んでみて、こんなチャートを作ってみました。選書の参考にしていただいたら嬉しいのですが、こうして色々読んだうえで、自分なり作ってみること自体が実は超面白いです。 ビジネスパーソン、特にマーケティング経験者にはお馴染みの「ポジショニングマップ」作りですね。どうです、こう聞くと俄然、真面目に漫画読みたくなりませんか? 「漫画でアート語るなよぉ~」という御仁はいらっしゃらないとは思いますが、そんな方には、かのルーヴル美術館がバンドデシネ(フランスの漫画…厳密には日本の漫画とは異なりますが)を「第9の藝術」と呼んでいることを知れば安心するかも。日本でも2016年にそれこそ展覧会が開かれましたね。 ということで、漫画でアートを知る、いえいえ、漫画そのものもアートでした、という話でした。どうでしょう? これならお気楽でしょう(^^)

【ブログ】アートは桜に勝てない? ~ブランディングの本質(六本木にて)

春の六本木、ミッドタウンを歩いていると、目を引くサインボードが!

ストリートミュージアム』!
“2018年度アートコンペ受賞作家6名が本展覧会のために制作した、インスタレーションや彫刻などの最新作がプラザB1に登場します。
今注目の若手作家の才能と個性あふれる作品をぜひお楽しみください”(ホームページより抜粋)

これがなかなかに素敵な作品が多く、公共の場所でこんな鑑賞ができるなんて、さすが六本木はお洒落だわぁ~と。

そこで鑑賞すること数十分…で、気づきました。
「あれ? ほとんどどなたも、気にとめていないんじゃない??」

平日、昼間の時間帯で、行きかう人が多いというほどでもなかったのですが、(だからこそ?) もっと多くの人が立ち止まって作品を楽しむのかなぁと思えば、ほとんどの方が目もくれず素通り。

こんなに「美しい」「面白い」のに、勿体ないような気も。まぁ、私のような都心おのぼりさんには物珍しくとも、都会の方々には、日常に溶け込んでいることで関心がわかないのだろうとも推察。

ところが、地下通路から地上にでるとこんな光景が。

そうです、桜です。
こちらは、もうひっきりなしに皆さま立ち止まっての写真撮影!
その注目度たるもの、まったく異なります。

「アートが桜に勝てない(≒注目度で差がつく)理由は何だろう…??」と、考えての自分なりの勝手な結論が「ブランディング」。

今回の”(ストリート)アート”と”桜”の違いを考えると、「自然と人工」「香りとか風とか、五感に感じる部分」「屋外と屋内(鑑賞環境)」…とか、色々と浮かんできましたが、それらはたいしたことではないのかなと。
「見えないものがどれだけ見えてくるかどうか」
の差が一番大きいのではないかと。これこそが「ブランディング」なのかなと。

 

”桜”にはみなさんこれまでの人生における経験値の量が半端じゃないんです。春の時期での様々な思い出が、”桜”に連動しているとでも言えばよいでしょうか。さらには、古典文学から流行の歌などを代表に、これまで”桜”に関する情報を取り込んできており(≒刷り込まれており)、日本人なら”桜”に、何らかのイメージ(好悪限らず)を必ずのようにお持ちです。
な、の、で、”桜”には抗えないブランディング効果(認知していて、自分のなかで何らかの意味付けがされている状態)が備わっているわけですね。通りすがりにちょっと出会った「アート」から想起されるものとは、圧倒的にインパクト(反応)が異なるわけです。

ということで、アートに限らず、新規「ブランド」を立ちげる時には、UX(ユーザーエクスペリエンス)体験をいかに素晴らしくデザインしようとも、すでに確固たるポジションをとっている競合(強豪)ブランドの時間と経験の累積効果(≒歴史、文化)に対して真っ向勝負はかなりきついという教訓?が得られるわけです。
むしろ、相乗り<*注記>のほうがお得感が、ありそうですね。
*好意的に受け止めても、真逆を提示しても、いずれにせよ既存ブランドのイメージを”利用”する

”相乗り”オブジェの例 …いわゆる「見立て」(同じく六本木にて)

と、小難しい話にしてしまいましたが、六本木の散策がめちゃくちゃ楽しかったというのが、一番お伝えしたかったところ。
あ、これぞまさにエリアの「ブランディング」効果かも(^^)

【ブログ】ビジネスに効く?アートな話③ 「印象派に見るイノベーションの極意Ⅲ」

絵画の世界で有名なイノベーションの一つと言えば「印象派」。一部の天才たちにより引き起こされたようにも思えますが、印象派の背景をもう少し見ていくと、彼ら彼女らは、単に時計の針を早く進めたことが分かります。
(ここまでの内容は、ビジネスに効く?アートな話① & ビジネスに効く?アートな話② をご覧ください)

ビジネスパーソンが最も知りたいことは、この時計の針を早く進めることかもしれません。そこで、印象派の様子を、マーケティング理論ではお馴染みの「PEST」になぞらえて勝手に考察してみました。

 

これまでの指標に当てはまらないのがイノベーション

勿論、印象派の例を従来の「PEST」にあてはめてみても実はあまり意味がありません。そこでイノベーターを分析をする新しい「PEST」を考えてみました。

P=People(人)

企業でイノベーションを起そうと思い立ったら、「変人(異端な人)」を集めて、チームにしてしまうことから始めましょう。それも既存組織上の部門にするより、「イノベーション派」として名乗らせた方が、より効果的かもしれません。

企業内でMBAホルダーがもてはやされた後、「変わった人」「使いにくい人」としてフェードアウトしていった例がありますが、これは既存部門に配置したがための当然の帰結です。普通の人の集団に、イノベーターを天才として認識させることはほぼ不可能です。それより、何だかわからない連中として目立たせた方が、その存在を認めさせる可能性は、何倍も高まります。「印象派」として集団として目立ったからこそ、その存在が世間で広く認知されたのと同じことです。

 

E=Emotion(感情)

事業トップがこれはと思うメンバー、”次代のエース”を選抜してイノベーション推進を任せるというケースが多いと思いますが、これは止めた方が良いかもしれません。

印象派の画家たちの中に、王立アカデミーから指示を受け、「異端」の作品を描いた者は一人もいません。「今のやり方、進め方に飽きたらない」という想いを持った個人が、勝手に動けるような形にする方が、強い推進力を生むのではないでしょうか。

 

S=Safety(安全)

これも非常に大切です。イノベーターと呼ばれる人たちの、普通の人にはわけの分からない行動は、単に咎められない(ペナルティを与えられない)だけでなく、むしろ思う存分やらせてあげる環境を整えることが重要です。

印象派の画家たちは、何となく貧乏なイメージが浮かんでくるのですが、実はブルジュア、お金持ちの子息が多いのです。だからこそ、革新にかける時間と心の余裕が持てたと言えるでしょう。明日の生活に困る状態で、長く「異端」を続けることは、かなり難しいことなのです。

 

T=Trial(実践)

イノベーションのアイデアは、企画書で判断してはいけません。いや、企画書を書いている暇があってはまずいくらいです。

「こんな作品を描こうと思っているのだが…」と、画家に長々と説明してもらっても、その画家の技量や感性を推し量ることはできません。実践を重ねることで、アイデアが形となって、周囲の人間の目に触れ、絶賛であれ酷評であれ、何らかのフィードバックを得ることで、イノベーションが進んでいくわけです。

 

《印象、日の出》は、全体にモヤモヤとした画面の中で、くっきりとした太陽のオレンジ色が、本当に鮮やかに輝いて見えます。

本当のイノベーションとは、取るに足らないように見える一つ一つの積み重ねがしだいに形となって生まれてくるもの。先行する「変わった人たち」が、その形を眩い光として感じ、示してくれることで、一般の人間が初めて認識し、心動かされるものなのではないでしょうか。100年前に興った印象派に、ビジネスパーソンが学ぶことは多いように感じます。

…と、勝手なうんちくを語るのも、美術の楽しみ方の一つかなと。