【レポート】アートカードで作るワークショップ事例 ~丸の内プラチナ大学「アートフルライフデザインコース Day4」

アートシンキングという言葉がビジネスパーソンの間でも話題になるようになりましたが、「何となく頭では理解できるのだが、実際にはどうやって身につけたらよいのか?」とお悩みの方も多いのでは?

アートシンキングそのものも色々な定義付けがある中、これでOKというメソッドは無いとは思いますが、子どもから大人まで、どんな方でもその一旦が味わえるのではというツールがあります。それが「アートカード」です。

「アートカード」とは、アート作品(絵画、彫刻、時に建築なども含む)をポストカード程度のサイズに印刷したものです。(写真を参照) この「アートカード」を使って美術史的な知識を深めていくことも勿論できますし、色々なワークショップ(≒ゲーム)を通して、アートシンキングを体感していくこともできます。

今回丸の内プラチナ大学アートフルライフ・デザインコース」では、「アートカード」ゲームの一つの定番である「物語作り」をベースに、”コミュニケーション”を体感するワークショップをデザインしてみました。題して「私たちのアート物語」です。

まず初めに、参加者の皆さんに「アートカード」の中から、最も自分がアートらしく感じるカードと、アートから遠いと感じるカードを一枚ずつ選んでもらいます。「え~、だってこれアートカードなんだから全部アートなんでしょう?」というナイスな質問を早速いただきました。ここでのポイントは「自分が」というところ。まずは自分の中にあるアートのセンスを引き出してみようということです。

次に、なぜそのカードが自分にとって「アート」なのか/遠いのか、その理由を付箋紙に書き出し、選んだカードと合わせてホワイトボードに貼りだし、グループの皆さんと共有します。「アート」として感じる、感じないのポイントが同じでないこと、つまりはバラエティの多さ、「正解」のない楽しさを味わっていただけたようです。今回は、さらに一工夫して、自分の「アートセンス」に名前を付けてもらいました。選んだカードから感じる言葉を使って、「柔(やわ)派」とか「ザラ派」、「宇宙と交信派」などなどユニークなネーミングが続出!

ここまでが前段階です。ここからいよいよアート物語を作成します。各メンバーの出した「アートと一番思えるカード」を使って、物語の前半を作ります。「アートカード」を使った”紙芝居”を作る感じでしょうか。この際のポイントは「即興(Improvisation)」。 前の人が出したカードに、自分のカードを使って物語を続けていくというのがルールです。「これ、どうやって受けたらいいのぉ~」と、自分の番が回ってくるとドキドキですが、逆に予想もしない展開に、グループのみんなで大笑いといった感じになっていました。

後半は「アートから一番遠い」と思うカードを使って物語のエンディングまでを作ります。前半と大きく異なるのは、グループ全員で相談しながら、台本を組み立てていくことです。「計画(Plan)」あるいは「台本(Scenario)」作りをチームとして進める感じですね。前半は「偶然」、後半は「意図」を意識してもらうプロセスなのですが、面白いことに、前半の方がやりやすかったというグループと後半の方がスムーズだったというグループに感想が分かれたこと。この辺り、チームで何かをやる時の参考になる気づきもありそうですね。

斉藤まなみさんによる当日の「グラレポ」

「アートカード」を使ったワークショップの様子。少しはイメージいただけたでしょうか? 「アートカード」を使ったゲームやワークショップのやり方はそれこそ無限大。企画を立てること自体で色々と発想が広がるので、それだけでも十分に「アートシンキング」が鍛えられそうですね。 

ご質問、ご意見ありましたら、ぜひぜひお気軽にお知らせください!

参考)今回使用した「アートカード」はこちら 

【ブログ】ビジネスパーソンがアートを”気軽”に楽しむ方法 <漫画編>

アートを楽しむというと、流行りの展覧会に行くことぐらいしか思い浮かばない方に、誰でもお気軽にアートを楽しめる方法はないかと、私自身が実際に試してみて、これは♪と思った内容を、気ままにお伝えさせていただきます。 第一弾は<漫画編>です。 「美術漫画」(アート漫画)で検索すると、お薦め10選といったサイトをいくつか発見できます。こちらから、好みのものをいくつか読んでみるのから始めてみるというのはいかがでしょうか? 美術知識をしっかり得られるような作品や、業界の裏話に通じるような話し、美大生の青春を描いたものなどなど、多彩です。作家(マンガ家)のアートの料理の仕方で、自分にはなかった視点に驚いたり、「これわかるぅ~ぅ」といった親近感を感じたり、混んだ展覧会で疲れるより、はるかに感動があるかも。 実際に読んでみて、こんなチャートを作ってみました。選書の参考にしていただいたら嬉しいのですが、こうして色々読んだうえで、自分なり作ってみること自体が実は超面白いです。 ビジネスパーソン、特にマーケティング経験者にはお馴染みの「ポジショニングマップ」作りですね。どうです、こう聞くと俄然、真面目に漫画読みたくなりませんか? 「漫画でアート語るなよぉ~」という御仁はいらっしゃらないとは思いますが、そんな方には、かのルーヴル美術館がバンドデシネ(フランスの漫画…厳密には日本の漫画とは異なりますが)を「第9の藝術」と呼んでいることを知れば安心するかも。日本でも2016年にそれこそ展覧会が開かれましたね。 ということで、漫画でアートを知る、いえいえ、漫画そのものもアートでした、という話でした。どうでしょう? これならお気楽でしょう(^^)

【ブログ】アートは桜に勝てない? ~ブランディングの本質(六本木にて)

春の六本木、ミッドタウンを歩いていると、目を引くサインボードが!

ストリートミュージアム』!
“2018年度アートコンペ受賞作家6名が本展覧会のために制作した、インスタレーションや彫刻などの最新作がプラザB1に登場します。
今注目の若手作家の才能と個性あふれる作品をぜひお楽しみください”(ホームページより抜粋)

これがなかなかに素敵な作品が多く、公共の場所でこんな鑑賞ができるなんて、さすが六本木はお洒落だわぁ~と。

そこで鑑賞すること数十分…で、気づきました。
「あれ? ほとんどどなたも、気にとめていないんじゃない??」

平日、昼間の時間帯で、行きかう人が多いというほどでもなかったのですが、(だからこそ?) もっと多くの人が立ち止まって作品を楽しむのかなぁと思えば、ほとんどの方が目もくれず素通り。

こんなに「美しい」「面白い」のに、勿体ないような気も。まぁ、私のような都心おのぼりさんには物珍しくとも、都会の方々には、日常に溶け込んでいることで関心がわかないのだろうとも推察。

ところが、地下通路から地上にでるとこんな光景が。

そうです、桜です。
こちらは、もうひっきりなしに皆さま立ち止まっての写真撮影!
その注目度たるもの、まったく異なります。

「アートが桜に勝てない(≒注目度で差がつく)理由は何だろう…??」と、考えての自分なりの勝手な結論が「ブランディング」。

今回の”(ストリート)アート”と”桜”の違いを考えると、「自然と人工」「香りとか風とか、五感に感じる部分」「屋外と屋内(鑑賞環境)」…とか、色々と浮かんできましたが、それらはたいしたことではないのかなと。
「見えないものがどれだけ見えてくるかどうか」
の差が一番大きいのではないかと。これこそが「ブランディング」なのかなと。

 

”桜”にはみなさんこれまでの人生における経験値の量が半端じゃないんです。春の時期での様々な思い出が、”桜”に連動しているとでも言えばよいでしょうか。さらには、古典文学から流行の歌などを代表に、これまで”桜”に関する情報を取り込んできており(≒刷り込まれており)、日本人なら”桜”に、何らかのイメージ(好悪限らず)を必ずのようにお持ちです。
な、の、で、”桜”には抗えないブランディング効果(認知していて、自分のなかで何らかの意味付けがされている状態)が備わっているわけですね。通りすがりにちょっと出会った「アート」から想起されるものとは、圧倒的にインパクト(反応)が異なるわけです。

ということで、アートに限らず、新規「ブランド」を立ちげる時には、UX(ユーザーエクスペリエンス)体験をいかに素晴らしくデザインしようとも、すでに確固たるポジションをとっている競合(強豪)ブランドの時間と経験の累積効果(≒歴史、文化)に対して真っ向勝負はかなりきついという教訓?が得られるわけです。
むしろ、相乗り<*注記>のほうがお得感が、ありそうですね。
*好意的に受け止めても、真逆を提示しても、いずれにせよ既存ブランドのイメージを”利用”する

”相乗り”オブジェの例 …いわゆる「見立て」(同じく六本木にて)

と、小難しい話にしてしまいましたが、六本木の散策がめちゃくちゃ楽しかったというのが、一番お伝えしたかったところ。
あ、これぞまさにエリアの「ブランディング」効果かも(^^)

【ブログ】ビジネスに効く?アートな話③ 「印象派に見るイノベーションの極意Ⅲ」

絵画の世界で有名なイノベーションの一つと言えば「印象派」。一部の天才たちにより引き起こされたようにも思えますが、印象派の背景をもう少し見ていくと、彼ら彼女らは、単に時計の針を早く進めたことが分かります。
(ここまでの内容は、ビジネスに効く?アートな話① & ビジネスに効く?アートな話② をご覧ください)

ビジネスパーソンが最も知りたいことは、この時計の針を早く進めることかもしれません。そこで、印象派の様子を、マーケティング理論ではお馴染みの「PEST」になぞらえて勝手に考察してみました。

 

これまでの指標に当てはまらないのがイノベーション

勿論、印象派の例を従来の「PEST」にあてはめてみても実はあまり意味がありません。そこでイノベーターを分析をする新しい「PEST」を考えてみました。

P=People(人)

企業でイノベーションを起そうと思い立ったら、「変人(異端な人)」を集めて、チームにしてしまうことから始めましょう。それも既存組織上の部門にするより、「イノベーション派」として名乗らせた方が、より効果的かもしれません。

企業内でMBAホルダーがもてはやされた後、「変わった人」「使いにくい人」としてフェードアウトしていった例がありますが、これは既存部門に配置したがための当然の帰結です。普通の人の集団に、イノベーターを天才として認識させることはほぼ不可能です。それより、何だかわからない連中として目立たせた方が、その存在を認めさせる可能性は、何倍も高まります。「印象派」として集団として目立ったからこそ、その存在が世間で広く認知されたのと同じことです。

 

E=Emotion(感情)

事業トップがこれはと思うメンバー、”次代のエース”を選抜してイノベーション推進を任せるというケースが多いと思いますが、これは止めた方が良いかもしれません。

印象派の画家たちの中に、王立アカデミーから指示を受け、「異端」の作品を描いた者は一人もいません。「今のやり方、進め方に飽きたらない」という想いを持った個人が、勝手に動けるような形にする方が、強い推進力を生むのではないでしょうか。

 

S=Safety(安全)

これも非常に大切です。イノベーターと呼ばれる人たちの、普通の人にはわけの分からない行動は、単に咎められない(ペナルティを与えられない)だけでなく、むしろ思う存分やらせてあげる環境を整えることが重要です。

印象派の画家たちは、何となく貧乏なイメージが浮かんでくるのですが、実はブルジュア、お金持ちの子息が多いのです。だからこそ、革新にかける時間と心の余裕が持てたと言えるでしょう。明日の生活に困る状態で、長く「異端」を続けることは、かなり難しいことなのです。

 

T=Trial(実践)

イノベーションのアイデアは、企画書で判断してはいけません。いや、企画書を書いている暇があってはまずいくらいです。

「こんな作品を描こうと思っているのだが…」と、画家に長々と説明してもらっても、その画家の技量や感性を推し量ることはできません。実践を重ねることで、アイデアが形となって、周囲の人間の目に触れ、絶賛であれ酷評であれ、何らかのフィードバックを得ることで、イノベーションが進んでいくわけです。

 

《印象、日の出》は、全体にモヤモヤとした画面の中で、くっきりとした太陽のオレンジ色が、本当に鮮やかに輝いて見えます。

本当のイノベーションとは、取るに足らないように見える一つ一つの積み重ねがしだいに形となって生まれてくるもの。先行する「変わった人たち」が、その形を眩い光として感じ、示してくれることで、一般の人間が初めて認識し、心動かされるものなのではないでしょうか。100年前に興った印象派に、ビジネスパーソンが学ぶことは多いように感じます。

…と、勝手なうんちくを語るのも、美術の楽しみ方の一つかなと。

【ブログ】ビジネスに効く?アートな話② 「印象派に見るイノベーションの極意Ⅱ」

絵画の世界で有名なイノベーションの一つと言えば「印象派」。一部の天才たちにより引き起こされたようにも思えますが、印象派の背景をもう少し見ていくと違った様子も見えてきます。
(ここまでの内容は ビジネスに効く?アートな話①をご覧ください)

まず主題。印象派の出現まで、日常の光景を描いた画家たちが西洋にいなかったのかと言えば、そんなことはありません。第1回印象派展(1874年)のおよそ25年前に、ミレーという画家は農民の生活シーンを描いていましたし、クールベという画家も、1855年には自身をレアリスト(写実主義者)として名乗り、田舎町で市井の人の葬式を描いたりしています。印象派は主題の選び方で、決して先駆者であったわけではありません。

 

印象派の筆触分割という描き方も、確かに斬新なものでしたが、いくつかの要素が誕生していたからこそ実現できたと見ることもできます。1839年の写真の発明。これにより、本物そっくりという絵画の価値は下がっていくことになり、画家は、光や色といった新しい価値を見いだし、表現する必要がでてきました。1841年に発明されたチューブ入り絵の具によって、画家はそれまでの室内のアトリエではなく、戸外で絵画を完成させることができるようになり、明るい日の光を表現できるようになったのです。1843年にパリと郊外のルーアンが汽車で結ばれたことも、画家たちのフィールドを広げ、新しい画法を試す機会を与えたと言えるでしょう。

 

何より、印象派の誕生に一番大きかったのは、絵画を鑑賞する層が、これまでの王侯貴族から、新興ブルジュワジーや一般市民に広がってきたことです。絵画美術が大衆化し、これまでとは違うタイプの絵画が求められる土壌ができてきたという状況がなければ、印象派の画家たちが、短期間にこれほどの人気を博すことはなかったでしょう。

 

このような話を聴くと、マーケティングに見識のある方は、「PEST分析」を思い出すかもしれませんね。PEST分析とは、マーケティングの大家、フィリップコトラー氏が提唱した、「自社を取り巻くマクロ環境を以下の4つの視点から、現在及び将来にわたりどのような影響を与えるかを分析する手法」のことです。

この4つの視点の中で、何かが大きく欠けていたり、著しく未成熟だったりすると、どんなに良いアイデアであっても、実現して世間に受け入れられることは難しいということになります。天才がどんなに出現したところで、機が熟していなければ、イノベーションは起こらないという風に考えることもできます。確かに、印象派の画家たちは、時計の針を早めに進めたかもしれませんが、彼ら彼女らだけが、絵画の革新を推し進めたわけでないことだけは確かなのです。

印象派に学ぶべきイノベーションの本当のポイントは?

しかしながら、時計の針を早く進める方法こそ、ビジネスパーソンが実は最も知りたいことであり、学びたいことかもしれません。印象派の様子をさらに眺めていくと、これは参考になるかもと思う点がありました。新しい「PEST」です。

続きは「ビジネスに効く?アートな話③」をどうぞ

【ブログ】ビジネスに効く?アートな話① 「印象派に見るイノベーションの極意Ⅰ」

最近いただくビジネスパーソンの名刺に「イノベーション〇〇」という部門名をよくみかけるようになりました。以前なら、「新規事業企画」とか「事業戦略推進」といったネーミングだったかもしれません。どうやらイノベーションは、日本企業にとっては、昨今避けて通れない話題のようです。しかしながら、「さぁ、我が社もイノベーションを起そう!」と、部門を立ち上げたからといって、そう簡単に事は進みません。アートの世界に、参考になりそうな事例はないでしょうか。


印象派の起したイノベーションとは?

絵画の世界での「イノベーション」の代表例と言えば印象派。日本での人気も、大変なものです。モネ、ルノワール、ドガ、セザンヌといった印象派の画家たちの作品が並ぶ展覧会は、毎回長蛇の列です。日本に限らず、例えばパリのオルセー美術館など、印象派の殿堂と呼ばれる美術館は、観光名所としても世界に名を轟かせていて、美術ファンならずとも「行っておかなければならない場所」になっています。では、印象派の起した「イノベーション」とはどんなものだったのかを、みていきましょう。

 

1874年、パリで開かれた「画家、彫刻家、版画家などによる共同出資会社」の展覧会(のちにいう第1回印象派展)が、印象派の始まりです。この展覧会が、当時の美術界、あるいは広く一般世間に投げかけた衝撃は、例えるなら、スティーブジョブズがiPhoneを世に初めてプレゼンしたぐらい、あるいはそれ以上のものだったかもしれません。展示されていた作品が、当時の「常識」とは、ことごとく異なるものだったからです。

 

それまでの絵画の主題(題材、モチーフ)は、神話や宗教に関するものがほとんど。鑑賞者に荘厳なテーマを想起させるようなものこそが、描くに相応しいものでした。描き方も、輪郭線がはっきりとしていて、筆の跡が残ることのないよう、綺麗に塗られていることが「常識」とされていました。何より、画家として当時身をなそうとするのであれば、王立アカデミー(国立の美術学校のようなもの)で学び、サロン(官展=国が主宰する展覧会)に入選することが一番の道。その道を歩むには、この「常識」をなぞるのが必須条件だった時代です。

 

ところが、印象派の画家たちが主題にしたのは日常のありふれた光景。しかも、絵の具を混ぜることなく、原色のままキャンパスに置いていく、筆跡(タッチ)が明らかに残る描き方(筆触分割と美術用語では言います)。何を描いているのか、一目ではわからないような作品だったのです。こうした、当時の常識では考えられない作品を、モネ達は、サロンとは別に独自の展覧会を開いて、世の中に示したのでした。

 

当時著名な批評家だった、ルイ・ルロワが、この展覧会を訪れ、くだんのモネの《印象、日の出》をさして、「印象しか描いていない。壁紙の方がまだ仕上がりが良いくらいだ。」と揶揄したことがきっかけで、後に印象派と呼ばれるようになったことも、逆に、印象派の画家たちの「イノベーター」ぶりを物語るエピソードです。

 

こうしてみると、アートの世界も、イノベーションは、一部の天才たちにより引き起こされるように思えますが、もう少し、印象派の背景を観ていくと、違った様子も見えてきます。

続きは「ビジネスに効く?アートな話②」をどうぞ。